てぃーろーどの公共交通雑記

鉄道・バスを中心に公共交通なんでも扱う予定です。

西日本JRバス 金沢エリア(名金線)の路線見直しについて 〜金沢市議会 議事録から〜


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2022年2月9日、西日本JRバスの金沢営業所管内で、大規模な路線の見直しを行われることが発表されました。

特に注目すべき事項として、北陸本線金沢駅城端線福光駅を短絡ルートとして機能していた名金線の大部分が廃止され、残るは金沢近郊の区間のみとなります。

 

この背景には、コロナ禍で西日本JRバス自体の経営が悪化し、高速バスによる利益で路線バスの赤字を穴埋めしていたものが成り立たなくなったことが挙げられます。

既に4ヶ月前から、金沢市議会の都市交通特別委員会において、西日本JRバスの本社経営企画課長や北陸支店長等が、赤裸々に現況を語っているのが確認できました。

 

概要は、以下の通りになります。

・令和元年では100億円を超えていた売上が、令和2年度では52億円とおよそ半減

・令和2年度の決算で、高速バスを含めたバス事業は30億円の赤字

・一般路線バスは西日本JRバス全体で6億円の赤字、国や県の補助を受けても4億円の赤字

・金沢営業所管内の一般路線バスは年間2億円の赤字

・高速バスの利益で一般路線バスを維持するスキームで何とか維持してきた

・山間部の運行について、国鉄時代から金沢で地域の足を守ってきたという自負はあるが、利用減少が続き、赤字であり余裕はない

金沢市は、市独自の支援制度を持ち、その支援をもらいながら運行しているが、コロナで甚大な影響を受けた

金沢市にも、利用状況等の情報を提供し、今後どのようにしていくか、常に北陸支店長を含め相談している

・何とか路線を維持する形で解決策を探し、今後もやっていけたらと思う

 

以下は、金沢市 令和 3年 10月 都市交通特別委員会の議事録より、委員(市議会議員)側の質疑とJRバスの応答について、今回の路線見直しに関わる部分の全文を抜粋しています。

この時には、既に路線見直しを含めた話し合いが行われていたと思われます。

 

Q.委員

 前回、北陸鉄道参考人招致した際に、今後、バス路線を維持するに当たり、現状の山間部路線への補助に加え、最低減の収入を保障することについて、ひとつの考え方であると言われたが、そのような制度に対する意見はあるか。

A.経営企画課長

 収入が一定の水準を下回った場合に補填するような形は、方法としてはあると思うが、我々としてどのような形態がよいか、この場で回答しかねる。今後の在り方として、交通政策課とも相談しながら検討したい。

 

Q.委員

 路線網として、赤字を余儀なくされる山間部路線を受け持ってもらっているが、改革の検討が課題として上がっている中で、どのような考え方で取り組もうとしているのか。

A.経営企画課長

 金沢に限らない話だが、高速バスの路線も含め、何か新しいところで路線が引けないか検討しているところである。例えば、金沢であれば新しく営業所が移転したので、新たに城北市民運動公園に路線を新設したが、そのようなエリアや市街地で新しく走れるところがないか検討している。

 

Q.委員

 本市は地域主体運行バスの制度がある。特に郊外に展開した団地では高齢化が進んでおり、車も手放さなければならないが生活に困るという悩みがかなり広範囲にあると思う。

 その中にはジェイアールバスに受け持ってもらっているエリアもあるが、地域主体で運行するというのは、交通事業者をどうするか、運賃をどうするかなど、なかなか難しく、思うように広がっていない状況がある。どのような可能性が見出だせると考えるか。

A.北陸支店支店長

 営業エリアとして持つ山間部については、現状としてどうすればよいか、悩んでいる。需要を考えると大型バスを走らせるのはどうなのかという思いもある。しかし、金沢営業所は大型バスしか配置されていないので、今から小型バスを導入するなど投資を行うことは、ここでやるとは言えない状況である。そのため、交通政策課に足を運び相談している。

 経営面において本社からいろいろ言われるのも事実であり、本当にどうしたらよいのか、答えが出ていない。しかし、委員指摘のとおり、様々なコミュニティバスが走っており、成功している事例もある。交通政策課に悩みを打ち明けているが答えが見えていない。

 

Q.委員

 ジェイアールバスのルーツは国鉄であり、民間とは経緯が違うとのことだった。そのため、金沢市での一般路線の運行は、山間部を中心に行っているわけだが、この山間部は高齢化、人口減少が進み、若者は町で勤務し新しい住宅に移るという傾向がずっと続いている。したがって、将来のことを考えたときに山間部の利用を増やすことの困難さがあると思う。

 採算だけの問題から考えれば廃止である。しかし、それは地域住民にとっては大変な痛手となる。今までの話では、最大限頑張っていきたいという表明と受け止め、一安心したのだが、今後の金沢市山間部のような路線について、どのような見通しと方針を持っているのか。

A.経営企画課長

 全国的に一般路線バス事業者がいたんでいると思っている。自社では京都でも山間部の路線を運行しているが、やはり利用の減り方は大きい。金沢市でも交通体系としていろいろな形態を検討していると思うが、山間部の交通の在り方について交通政策課と議論している。今の時点でこうするということは言えないが、最近はいろいろな方式があるので、バスの形がよいのかを含め、議論したいと考えている。

 

Q.委員

 金沢市は新しい交通システムをはじめとする今後の交通施策を現在検討しているが、このような新しい施策にどのようなスタンスで対応していくのか。

A.経営企画課長

 金沢でしっかり運営していきたいという考えを持っている。新しい交通体系がどのような形になるのかが見えている状況にないので、現時点でここに関わっていくというところまで答えることはできないが、市内エリアごとの役割分担も含め、必要とされ、提案があれば検討したいと考えている。

 

Q.委員

 ジェイアールバスには、もともと人口の少ない山間部路線を担ってもらっており、路線維持は大変苦しい状況であると思っている。金沢営業所の経営状況も相当厳しいと思われるが、そのような情報があれば提供してほしい。

 また、金沢市に対してもより具体的な財政的支援を希望しているのではないかと考えるが、どうか。

 

A.北陸支店支店長

 販売状況について説明する。一般路線バスについて、8月単月では、対前年度比93.3パーセントである。コロナ前の対前々年度比では45.2パーセントである。年度累計では、対前年度比127.2パーセントだが、対前々年度比では54.1パーセントである。

A.経営企画課長

 金沢市からは独自の補助金ももらっており、今回のコロナによる減収分についても一定の支援をもらっていることから、大変ありがたく思っている。その補助が足りているか、そうでないかは、いろいろなものとの兼ね合いになるので、この場でさらに補助がほしいとは言えないが、我々はもちろん努力する。

 金沢市にも、利用状況等の情報を提供しながら今後どのようにしていくか、常に北陸支店長を含め相談している。何とか路線を維持していく形で解決策を探し、今後もやっていけたらと思っている。今、補助金をもらえていること自体に物すごくありがたいと思っている。